怪奇体験・短編集
洋子ちゃん
私が短大生になって、一人暮らしを始めた頃のお話です。

ちょっと不思議で面白い事が有りました。
私が住んでた下宿での事。
そこの家は短大の子ばかりの下宿でした。
二階建てのちょっと古い家。
一階と二階と合わせて10名位だったと思います。
私は二階の真ん中の部屋でした。
それぞれの部屋に簡単な鍵も付いていて、プライバシーもあって結構快適に暮らしていました。
その中に、特に仲良くなった友人が一人、出来ました。
洋子ちゃんと云う子です。
頭も良くて、面白くて綺麗な、本当に素敵な友人です。
ただ、いつもマイペース。
ノックもしないで「千絵おる~~?」と、言う声と同時に部屋に入ってきて、自分の言いたいことだけ言うと、自分の部屋に戻って行きます。
嵐のような子やな~と、苦笑い。

ある日、学校から帰って、部屋に鍵を掛け、バイトの時間までちょっと休憩・・と、思ったら、又いつもの様に、ガチャンとノブを回して入ってきたのです。
そして、やはりいつもの様に私の部屋から「これ貸してね!」と、何かを手に持って自分の部屋に帰って行きました。
「何を持って行ったんだろう?・・・。まあ、いいわ。」

ん???良くない!!
私、部屋に鍵かけたよな??絶対、掛けた!・・・はず。
でも、洋子ちゃんは、入って来たし・・。
何か釈然としないまま、バイトへ。

次の日、帰って来て鍵を【カチャッ】今度はちゃんと掛けたぞ!
またしても、「千絵おる~~?!」と、洋子ちゃん。
やっぱり、ノブを回して入ってきました!!、
唖然とする私を後目に、「これ返すね!アリガト!」と、去って行く洋子ちゃん。
鍵、壊れてるんかな?

そして、又、次の日、ドタドタドタッと廊下を走る音。
「来た!」
じっと、鍵を掛けたドアを見てたら、やっぱり「千絵ちゃ~~ん!」って入ってくる。
一度、私も試しに鍵を鎖さずにノブを回してみるけど開かない。
「鍵、壊れてないな。・・・なんで、洋子ちゃんだけなんやろ?
もしかしたら、他の子も開けられるのかも。試してみよう!」

違う友達に遊びに来てもらいました。
ドアをガチャガチャして「あれ?千絵おらんの?」と声を掛けてくる。
同じ下宿に住んでる他の友達は、入って来れないみたい。
鍵を開けて、洋子ちゃんの話をしたら、「そんな事有り得ない!」って信じてくれません。
何人か私の部屋に来て、鍵を掛け、大声で洋子ちゃんを呼んでみました。
「洋子ちゃ~ん!ちょっと、千絵の部屋においで~!」
また廊下をドタドタ走る音が響いて「なに~~?」ガチャッ!入って来ました!!
「・・・!」
皆、ビックリ!!一瞬シ~~ンとして、何故か爆笑!
意味の解らない洋子ちゃんが、怪訝な顔をしているので、私が事情を説明しました。
当の本人もビックリ!!

不思議なのは、それから以降、洋子ちゃんが鍵のかかった部屋を空ける芸当は出来なくなりました。
今でも仲良し、大親友の洋子ちゃんです。
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