小さなキミと
「だって普通は、市立(いちりつ)は私服でしょ? 制服があるなんて、頭いい私立(わたくしりつ)の小学校ぐらいしか……」


「小学校!?」


あたしの言葉を遮(さえぎ)って、素っ頓狂な大声を上げた彼。


そのせいで、思わずこっちまでビックリしてしまった。


その様子から察するに、小学生でもないってこと?

じゃあこの子は一体いくつなんだ。


混乱するあたしに向かって、彼が叫んだ。


「ばっかじゃねーのッ」


明らかに機嫌を悪くした彼は、あたしの腕を思いっきり振り払って、するりと自転車にまたがり地面を蹴った。


「えぇっ」


ちょっと待ってよ────


口より先に体が動いた。

あたしの手が咄嗟(とっさ)に彼の自転車の荷台を掴んでいたのだ。


異常な重みに気づいたのだろう、彼は後ろを振り返って、ギョッとした顔をした。


「アンタ何やってんの」


「それはこっちのセリフッ」


あたしは声を荒げた。


「何怒ってんのか知んないけど、それはないでしょ。いきなり馬鹿とか、マジ意味分かんない。こっちは怪我してんのにッ」


「怪我ぁ?」


訝(いぶか)しげに彼は言った。


「足首ひねったの。誰かさんのせいでね」


すると、彼は急に表情を曇らせた。


「オレ、嘘つく女は嫌いなんだけど」


「ハァ?」


何その“女はもうコリゴリ”的な発言。

そんな子どもみたいな顔で言われても、腹立つだけなんだけど。

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