小さなキミと

意地を捨てて






何がキョウダイだ、何が八神が怒るだ。


ふざけんじゃねぇ。


「うるさいっ、だったら吉岡……」


やめろ剛、あんなヤツ相手にするだけ無駄だ。


つーか気安く剛に話しかけんな。


なんだかんだで気を引きたいだけってのがバレバレなんだよ。


「……有くんに借りればぁー?」


あぁもう、八神だの有だのうるせーよ!


オレがこの1週間どんな気持ちでアイツらを見てきたと思ってんだ。


剛は八神のことでいっぱいいっぱいになってて、オレの事なんかもう気にもしてねーし。


さっきの自習だって、オレが隣の席にいることに気づいたのいつだよ。


とか、オレが言える立場じゃねーのは分かってるけどさ。


大体何で八神だと……そうなって、オレだとキョウダイなんだよ。おかしいだろ。


オレが教科書とか見せるのを躊躇(ためら)ったのは、情けないけど近すぎてビビったからで……。


嫌だからじゃねぇ、断じて。


つーか何で八神は教科書持ってんだ────




考えるより先に、咄嗟に手が出た。


何か、何か言わないと。


「行くな」と正直に言いかけて慌てて口を閉じる。


失敗、下手を打った。


剛が困惑しているのが分かる。


とにかく何か言わないと。


コイツを八神から遠ざける何かを……

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