小さなキミと
「なにそれ、その子どっかの探偵? 一回会ってみたいわぁ」


結が呑気に笑いながらそんなことを言ったので、あたしはムッとした。


「そんな可愛らしい子じゃないし。ただの憎たらしいガキだよ。ずーっと不機嫌だったし、何か急にキレるし、意味分かんなかった」


もちろん、全部服部に聞こえているのは承知の上だ。

というよりも、火花を散らす睨み合いが続く今の状態では、彼に向かって言ったようなものだった。


案の定、服部は目を大きく見開いて怒りをあらわにした。


「憎たらしいのはお前だろ?」


そう言いながらつかつかとあたしの元へやって来た服部は、すごい剣幕で子どものように食ってかかってきた。


「お前がオレをガキ扱いして年上ぶるから、腹立って腹立ってしょーがなかったんだよッ」


そのせいで、教室のざわつきが一瞬で時間が止まったように静かになる。


「ガキ扱いなんて、してません」


あたしが冷静に反論すると、服部は鼻で笑った。


「お姉さん、とか言ってただろ? 馬鹿みたいに」


うわっ、その言い方すっごいムカつく。


「馬鹿って何? あたしはアンタのこと心配して……」


「それはどうも、“お姉さん”」


皮肉たっぷりに言い放った服部。

その瞬間、あたしの中で何かがプツンと切れた。

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