小さなキミと
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『……涼香、あたしそれ聞くのもう3回目なんですけど』


「嘘だぁ3回も言ってないよ。まだ2回目です!」


自信満々で言ったあたしに、結が電話の向こうでため息を吐いた。


『2回だろうが3回だろうが、前に言ったの覚えてんなら何回も同じ話をしない!
ノロケなら他所(よそ)でやれ!』


結はぷりぷり怒った声で

『もう用がないなら切るよ! 寝るから!』

と続けたので、あたしは慌てて引き留めた。


「待って待って! ちゃんと用あるから、切らないで!
明日の事で訊きたい事がまだあるんだよー」


少し間が開いてから、『何?』と短い返事が返ってきた。


取りあえず通話は続行させてもらえるようだ。


時刻は夜0時を過ぎているので、本来なら電話は手短にしなければいけない。


むしろ控えるべきだ。あたしはともかく、結の明日(もう既に“今日”だが)に差し支える。


だけど相手が結だと、ついつい話が脱線して1人で盛り上がってしまう────というか、わざとそうしている。


「あのさ、結明日リュックで行く?
それとも肩掛け?」


今度はもっと深いため息があたしの耳に届いた。


『あのねぇあたしもう眠いんだけど!
どっちでもいいじゃん自分の好きな方で!あたしに合わせなくていいの!』


「えー、結つめたーい」


『つめたーい、じゃねぇよ! こっちは眠いんだよバァカ!』


今の結と喋っていると、何だか服部との掛け合いを思い出す。


結は昔から、眠いと機嫌が悪くなり口も悪くなるのだ。


「そう怒らないでよ。
だってあたし、何か興奮しちゃって眠れないんだよねぇー」


『お前は小学生か!』


結のそれを最後に電話は切れた。

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