小さなキミと
そんなに怒らなくてもいいのに。


あたしは真っ黒なスマホ画面に向かって唇を尖らせた。


「そーだ、服部に電話してみよ!」


しばらく続いたコール音の後、唸るような声で服部が電話口に出た。


『ん……なに……』


「もしもし服部! 暇なんだけど!」


開口早々、元気いっぱいに喋りたい意志を伝えると。


『……切るよ』


いきなり終了宣言をされたので、「待って!」とすかさずそれを阻止した。


「待って、ちょっとだけ喋ろ?
何かあたし全然眠れなくてさ。ほら、明日遊園地じゃん? 楽しみで興奮しちゃって!」


『……お前は小学生か』


限りなく低いテンションで結と全く同じことを言われたが、電話は切られずに済んだ。





8月も後半に突入し、夏休みもあっという間に終わりに近づいている。


遊びで遠出するには少々遅すぎるこの時期に、

あたしと服部、それから結と葉山くんの4人で遊園地へ行く計画を立てていた。


両想いのくせに未だにくっつかない日向と世良くんも誘ったけれど、2人は2人でどこかへ遊びに行くらしい。


……あの2人のことは、あたしにはもうよく分からない。


もっと早い時期にすれば余裕があってよかったけど、

4人中3人が何かしらの部活に入っているので予定が全然合わなかった。


そのうえ服部は、ただでさえ部活で忙しいというのにアルバイトを始めてしまって。


服部との夏の思い出はほとんど作れていない。


部活の終わる時間が被った時、一緒に帰るくらいだ。


ということで、

奇跡的に4人の都合が合った明日の遊園地が、あたしは楽しみで仕方がない。

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