小さなキミと

居残り勉強からの

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9月に入り、長いようで短い夏休みは終わりを告げた。


「────なので、演者は台詞を覚えなくても大丈夫だけど……できれば覚えて来て欲しいです。動きを合わせなきゃならないんで」


ロングホームルームの時間を使って、文化委員の渡辺(わたなべ)さんが説明している事、それは。


来たる文化祭でのクラスの出し物、『白雪姫』の劇について。


台詞を覚えなくてもいいというのはつまり、演者と声は別の人物にするという事だった。


1つの役を、舞台の上で動きを演じる人と、舞台そでからマイクで声の演技をする人とで分けるそうだ。


去年の先輩たちが劇で大失敗をしたので、その教訓を生かしたらしい。


なんでも去年は、『演じる人の声が全く聞こえない』とブーイングの嵐だったそう。


声の演技は大道具の人が掛け持ちでやるみたいで、あたしには関係がない。


そう、何と言ってもあたしは『主役』の白雪姫の演者だから。


「ってことで取りあえず今日は、台本に目を通して来てください。
来週の放課後から合わせの練習やるんで忘れないでねー」


渡辺さんの締めの言葉で、クラスは解散になるかと思いきや。


担任の鬼頭が横からサラッと爆弾を落とした。


「教科担任から伝言。数Aと数Ⅰの夏休みの課題、まだ提出してないヤツ今日居残りな」


そんな訳で、あたしと服部を含む十数名が教室に居残ることになった。

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