小さなキミと

球技大会

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6月上旬の、ある日の朝。


天気は曇り。

程よく雲に覆われた空が広がっていて、風も涼しく心地よい。


今日は一日を通して、過ごしやすい陽気になるらしい。


まさに、絶好の球技大会日和だ。







まだ時間が早いせいか、学校の駐輪スペースには自転車がほとんど停まっておらず、人もまばらでスカスカだった。


オレは兄から押し付けら……譲り受けた、赤い自転車をそこへ滑り込ませる。


球技大会は、球技系の部活をやっている人がひときわ輝くことのできる日だ。


うちの高校は、自分の部活の競技に出ちゃダメ、という決まりはない。

だからオレは当然、バレーの種目を選んだ。


ただ審判やネットの準備などは、強制的にそれぞれの部活の仕事となっている。

オレがいつもより早めに学校へ登校したのはそのためだ。


自転車のスタンドを立て、オレはカバンを手に校舎の方へ足を進めた。


「おーい服部、カギ忘れてるよ」


背後からの女の声に振り返り、思わず顔をしかめる。

そいつは今ちょうど、駐輪場に入って来たところだった。


「なにその顔。しつれーなヤツ。せっかく教えてあげたのにさぁー」


ブーブー言いながら長いポニーテールを揺らし、自転車から降りたそいつの名は剛涼香。


女子の中ではダントツの長身で、クラスの男子たちいわく“スタイル抜群”らしい。

それと、クラスの男子たちいわく“背が高いわりに童顔で可愛い”らしい。


言われてみれば……否定できなくもない。


死んでも絶対口には出さないけど。

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