きっと、明日も君がすき。

「ふーん。矢野さんの思っていた青はこの青だったんだね」


「はい」


青と一言言っても、思う青はいろいろある。

濃い、薄い…

日本はすばらしくて、そのざっくりした青の中に昔の人がいろいろな名前を名づけてくれているのだけれど、その色を探すのもまた一苦労で。

色彩標本の図鑑を眺めながら、思い描いた色に近いものを探した。


言葉にしないと相手に伝わらない。だけど、こういう些細な感覚はうまく言葉にして伝えることができない。


でも、こうして色を出せたことで私の思い描いていた世界観を先生に分かってもらえることができた。



それが嬉しくて思わず笑顔になる。

「このあと職員室に戻るけど、あと大丈夫?」



ふと腕時計を眺めた先生が私に尋ねる。


「あ、大丈夫です。すみません遅くまで」


「いや、それは全然良いんだけど…戸締りだけしっかりね」

「はい」

そういうと先生は持ってきたプリントや教科書類を抱えて出て行った。

「ふぅ…」


キャンバスを眺める。頑張らなきゃ。人よりも遅いからこそ、頑張らなければ。




そう思って、また筆で絵具を拾った。











…どれくらいそうしていたのだろうか。





時計の秒針の音も、外から聞こえていた生徒の声も全く気にならないくらい集中できていた時。

―――コンコンっ、


ふと窓ガラスが叩かれた音に、ハッと走らせていた筆を止めて、ゆっくりと音のする方を見た。

窓の外は真っ暗で。


< 119 / 156 >

この作品をシェア

pagetop