きっと、明日も君がすき。



一言。そういわれて結真君は勉強を始めた。


こうして、結真君にせかされてせかされて…

結真くんと美術室を共有するようになって8日目。

つまり、試験一週間前。

結真君がまだ部活をしている時間帯に、やっと私は作品を完成させることができた。

ぐっと伸びをして、作品から離れて立って眺める。


これ。これこそ私が思い描いていた絵。

上手ではないけど、見てほしかった世界観。今までの苦労と、迫りくる締切のプレッシャーから解放されて、体からすうっと力が抜ける。

「終わったぁ…!」


明日、先生には見せよう。


時計を見れば、結真君がくる時間はもう少し先。一つ終わったと思えば、また次がやってくる。


期末テスト。

要領の悪い私が1週間でどうにかできるわけがないのだけれど…。


結真くんがくるまで、少しでも勉強しておこう。そう思い、いつも結真君が座る場所の反対側に座る。


あ…。


そこで、思い出した。


結真くんは、作品を描いていた私に付き合ってくれていただけ。


だから…


完成したら、明日からここに来なくなるのかな?


どのみち、美術室は私が作品を描き終わるまで先生が許可して残れていただけで、完成させれば明日から使えなくなる。

今日が最後かな…。


すごく嬉しかったのだけれど。


もしかしたら今日ですら完成させたことを言えば結真君は「あっそ」って言って帰って行ってしまいそうな気がする。


……ここでの結真くん、学校の他の場所で見かけるときよりも雰囲気が柔らかくて、優しい気がしたのに。



もう終わりかな…。

寂しい。

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