絶対やせて貰います。
「私がどれだけ連絡入れたか分かってる?」カンナちゃんの抑揚の無い平坦な声が余計に私の恐怖を煽る。
美人が怒ると本当に怖い。
『あいにくと電源を落としていたので分かりません』迂闊そう言おうものなら張り倒されそうな勢いなので首を横にブンブン振るだけで返事をした。
「……で、一体何があったの?」忙しい二人なのに私が引き籠っている原因が気になるご様子。
「あの、考えを纏めるのでお茶だけ入れさせてください」と言い残しキッチンに逃げる私の後ろから「考える時間は一週間、十分にあったよね?」と嫌味混じりのぼやきがあったのは聞かなかったことにした。
二人にコーヒーと丁度焼き上がったばかりのパウンドケーキを出し終えた私は……
旭君と坂口さんに駅でバッタリ遭遇した勢いでダイエット終了宣言したことに始まり、寄り添うように語り合う旭君と坂口さんに嫉妬して飲めないお酒を煽るように飲んだことまでを順を追って説明した。
その間一言も口を挿まずに話を聞いてくれたカンナちゃんが「それでこいは小岩井旭に告白するの?」って腕を組み眉間に皺を寄せて訊いてくる。
その選択肢はとうに露と消えていたので、また首を横に振って返事をする。
バンッとダイニングテーブルを勢い良く両手で叩くカンナちゃん、揺れたテーブルの上でカップ&ソーサーがカチャカチャと音を立てるから私はまるで自分が叩かれたみたいな気がして首を竦めて更に縮こまってしまう。
「それなら何で家に引き籠ってるわけ?一週間振り会ったらこい。また丸くなったけど、ずっーとそうしてるつもり?」