マネー・ドール -人生の午後-
リフォーム

(1)

「ここがね、よくわかんないの」
「これは、この図を書いたら分かり易いですよ」
 俺はさっきからずっと、応接のソファに座って、真純と山内の会話を聞いている。
目の前には新聞が広がってるけど、そんなもん、読んでるわけない。
「なるほどぉ。山内くん、すごい!」

 真純が俺の事務所で働くようになって、二か月が経った。
 来月、真純は簿記検定を受けるらしく、猛勉強中。山内はつきっきりで、真純に教えている。
仕事しろよ! と言いたいけど、残念ながら真純が来てからというもの、ヤロウ共のやる気はガンガン上がり、新規の客もなぜか増えつつある。
 特に山内は、真純とセットでクライアント先を回ってるから、いや、これは不本意なんだけど、いつの間にか真純の教育係は山内になっているから、仕方ない。
俺の仕事に付き合わすわけにはいかないしなぁ……そう、一緒にいるから、そりゃこのコンビは最強で、ああ、全く……真純、コーヒー淹れてくれる? なんて所長室に呼んで、よからぬことをするつもりだったのに!
「あー、もう、難しいよぉ。試験までもう時間ないのに、どうしよう」
「三級は大丈夫だと思いますよ。さあ、もうちょっと、やりましょうか」
「うん、頑張る」
 電卓を一生懸命叩く真純の横顔を、山内がキザに眺めてる。
 あれから真純は髪を短く切って、ちょっと明るめの、ショートボブ。耳には、『両想い記念』に、俺のタイピンとペアで買った、ダイヤのイヤリングが光る。
長い髪もよかったけど、なんか、子供っぽくなって、カワイイ系に路線変更したって感じかな。
着る服も、オフィスカジュアルとか言うのか? 今日はVネックの白いニットに、紺色のちょっと短いフレアスカート。スーツより、女っぽくて、俺は好き。そして、ふん、ヤロウ共も。

< 142 / 224 >

この作品をシェア

pagetop