マネー・ドール -人生の午後-
 たぶん、これからも、いろんなことがある。いろんなことを、乗り越えていく。二人で、一緒に、乗り越えていく。
 この不安な真純を、俺は守って、いつか、真純が本当に安心できるようになる日まで、俺は闘い続けなきゃいけない。
 病院に通わせようとか、いろいろ考えたけど、それは最終手段で、少しでも俺の手で、真純を守ってやりたい。
 いや、そうしないと、今まで傷つけてきた人たちに、もうしわけが立たない。俺も、中村や聡子さんのように、ただ、受けとめられる人間に、ならないと。

 あの夜、俺たちはやり直そうって約束して、やっと両想いを確認して、つきあい始めたのかもしれない。
 結婚にたどり着くのは、いつの頃かな。まあ、死ぬまでには……いや、別にいいか。もし、その時がきたら、今度はちゃんと、給料三ヶ月分のエンゲージリングを買って、プロポーズしないとな。

 俺はまるで、RPGの主人公だ。時々、中村の宿屋に泊まって回復しねえと、全滅する。
 真純と本当の夫婦になれた時に流れるエンドロール、いつの日か……

「愛してるよ、真純」
「私も、愛してる。慶太」


 新しい生活。
 ソファで俺達は、素肌のままで、これからの新しい生活に、これからの俺達に、想いを馳せた。
 
 だけど、神様ってやつは、どうやら、俺達をまだ、許してくれないらしい。俺達の罪は、俺達に、ずっと重く、償いを求めている。







〈第一部 完〉
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