マネー・ドール -人生の午後-
別離

(1)

 リフォームから、一年が経った。
 俺達は相変わらず、ラブラブ夫婦街道一直線……なはずだったけど、どうやらちょっと、様子が変わっている。

 俺の事務所のリフォームは、来る客、来る客に好評で、口コミで田山はいろんな会社でリフォームを手掛けまくって、いつの間にか、ビジネス誌や専門誌にあのイヤミなキザな顔が載るようになっていた。
 おまけに、イケメンデザイナーとか、そんなフレコミがついちまって、俺のほうが断然イケメンなのに、テレビやら女性誌なんかにも出没するようになって……
 ああ、気に入らねえ! 俺のおかげなのに、あいつは、真純に(だけ)愛想よく、しつこく、一緒に仕事しませんか、と事務所に現れて、まあ、真純もそのたびに断ってるんだけど、どこからか、料理のコラムの話を持ってきて、結局、真純もその仕事は喜んで引き受けてしまった。
 ……それだけなら、よかったんだけど……
 ファッション雑誌が真純の美貌を見逃すわけはなく、いつの間にか、読者モデルなんて始めてしまった。当然、あっという間に人気が出てしまって、あちこちの雑誌に登場して、俺も、ちょっと……鼻高々。
 だって、やっぱり、うれしいじゃん。自分の嫁さんがこんなにイケてて、女から羨望の眼差しで見られてるなんて。
 でも、料理の仕事と、モデルの仕事と、事務所の仕事をかけもちしてるもんだから、かなり忙しくて、事務所にはあんまり顔を出せなくて、家に帰っても、ゆっくりいちゃいちゃする時間がなくなってしまった。 
 まるで、空白の俺達の時のようになっちまってて、でも、顔を見たら、お互いキスしたり、ラブラブできるから、あの頃みたいに、冷たい生活じゃないんだけど。
 しょうがないか。俺も真純も、仕事なんだから。ちょっとくらい会えなくっても、ガマンガマン。事務所も、くやしいけど、田山と山内のおかげで、儲かってるし……

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