マネー・ドール -人生の午後-
 東京への帰り、松永さんが、兄貴が次の選挙で、国政に出ると教えてくれた。真純に、広報活動をしてほしいと言っているらしい。
「真純に聞いてみます」
 俺の返事に、松永さんは、怪訝な顔をした。なぜかはわからないけど、松永さんは、それからずっと、機嫌が悪くなった。

 わからない。俺の何が悪いのか、何が間違ってるのか。
 じゃあ、どうすればいいんだよ。精一杯やってるんだよ。真純のこと、大切にしてる。愛してる。真純のために、俺、頑張ってる。
 だけど、違うと言う。田山も、山内も、松永さんも……何が違うんだよ。真純の思うようにさせてやってるし、不自由なくさせてる。これ以上、俺にどうしろって言うんだよ。
 なあ、真純。お前はどうすれば、その寂しい目をしなくなる? 教えてくれよ。俺、その通りにするから。

 お前が本当の笑顔で笑えるように、俺、なんでもするから。
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