マネー・ドール -人生の午後-
「同期がね、辞めるんだって。みりちゃん、覚えてる?」
「ああ、覚えてる。どうして?」
「赤ちゃんができたって」

 そう言って、ふと、思った。
まだ、妊娠、できるんだよね、私も。赤ちゃん、生めるんだよね。
 そんな話、したことない。セックスするときも、避妊、してるし……
慶太は、どう思ってるんだろう。やっぱり、今更、子供なんてって、感じかな。そうだよね。ずっと二人だったんだもん。今更、だよね。
「赤ちゃんかあ。ね、俺達も、つくろっか」
 え? そんな軽い感じで言っちゃう?
「なーんてね。冗談。真純も仕事があるし、無理だよね。俺も家にいたりいなかったりだしさ」
 ……なんだ……冗談、か……

「真純。なんか、その髪の色さ……」
「何?」
「エロい」
 は? 
「エッチしよ」
 慶太って……性欲の塊ね、きっと。

 あのバーベキュー以来、夜の回数が増えてて、私はちょっと……お疲れ気味。
でも、慶太に抱かれてると、もうあんまり、将吾のことはあんまり思い出さなくなって、慶太のことは、どんどん好きになって、やっぱりこれで良かったって、思えるようになってる。
 このまま時間が過ぎればきっと、慶太のことだけ、愛せるようになるよね。
早くそうなりたい。慶太のこと、本当に好きだから、あなたのことだけ、考えていたいの。

「慶太……私のこと、好き?」
「好きだよ、真純。愛してる」
「私も、慶太のこと、好き。愛してる」

 その夜も、優しいベッドを交わして、キスをして、眠りについた。

 少し、蒸し暑くて、エアコンを、今年初めて、冷房に切り替えた、夜だった。
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