マネー・ドール -人生の午後-

(4)

「ただいま」
「おかえりなさい」
 でも、俺にも今は、こうやって出迎えてくれる真純がいる。
「渡してくれた? お土産」
「うん。ありがとうって」

 テーブルの上には、真純の食べかけのサンドウィッチと、インスタントのスープ。
「それ、晩飯?」
 真純はうん、と頷いて、テーブルの上を片付けた。簡単な食事。真純が一人の時は、こんな食事ばかりなことを、俺は知っている。だけど、家で二人で食事をすることなんて、滅多にない。お互い、外の付き合いがあるし、仕事もある。
 でも、もし、真純が専業主婦なら、どうだろう。俺は学生の頃みたいに、食べに帰るかもしれない。二人で、テーブルを囲んで、あの頃は偽りだったかもしれないけど、今ならきっと、本当に、笑顔で食事ができる。

 真純は、お気に入りなのか、その白い花柄のワンピースをよく着ている。タオル地で、ふわふわして、真純の細いカラダが、よけいに細く見える。
「そのワンピース、かわいいね」
「これ? ずっと前から着てるよ」
「前から思ってた」
 抱き寄せた真純の髪からは、シャンプーの香りがして、その場で押し倒してしまいそうなくらい、一気に欲情してしまう。
「風呂、入ってくる」

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