君のとなりで
「そっか…」

そう言うと山下は俯いてしまった。

なんだか少し、拍子抜けした。

もっと怒ったりするかと思ったのに…

「…二人が納得した決断で、後悔しない結果ならあたしは口出ししないよ。でもね…」

そこで一呼吸おいて顔をあげた。

「実結は、あのこは颯君が思ってるよりも強くなったよ。確かにまだ泣き虫だし、子供っぽくて危なっかしいとこもたくさんあるけど、颯君と付き合ってから実結は強くなったよ。」


俺と付き合って、強くなった?

そうなのか…?

「ああ見えて実結は実結なりに色々考えてるんだと思う。」




山下と話終えて教室に戻ると、隣の教室から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「藤咲さん、そっち持ってて。」

「こう?都築君、あたしがやるよ?」

そっか、あいつは図書委員だから係あるのか…

こちらの教室には誰もいないので二人の声が丸聞こえだ。

聞きたくなくても耳に入ってくる。

「いーよ、藤咲さん背低いからできないでしょ。」

「もう!なにそれ!」

ついこの前まで一番近くで聞いてたはずの心地いい声はなんだかとても遠くから聞こえたような気がした。

早くこの場から立ち去りたいのに、耳を傾けてしまう。

今日だってそうだ。

始業式の為に廊下に並んだとき、いつもの癖で目線はC組の前の方へ。



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