君のとなりで

嫉妬 side颯

2月14日、今日は世間ではバレンタインデー。

こんな行事をするのは日本だけで、お菓子会社の策略でチョコレートを売るための行事。

なのに、数日前からフワフワと浮足立っている馬鹿なこいつ。

「あーあ、今年はどんなチョコくれんのかな、付き合って初めてのバレンタインだもんな!たのしみだなー!」

机の上には開きっぱなしの英語の問題集。

置かれたシャーペン。

俺はそれを丸めて、パコンと昂の頭を叩いた。

「バカ、受験まで1週間切ってんぞ。落ちる気か?」

「いって!なんだよー!いいじゃんかよ、バレンタインくらい浮かれたってさ!颯だってワクワクしてんだろ?実結ちゃんのチョコ!」

「別に。やる気ないなら帰るわ。」

実結、待ってるし。

「そんなこと言って!これから実結ちゃんと帰るくせに!ふんっ!俺だって今日は早紀と帰るもんね!」

そう言うとほんとにシャーペンや問題集を片付け始めた。

「なあ、なんでお前彼女いるのにそんなにチョコもらってんの?」

下駄箱から靴を取り出しながら昂が俺のカバンを睨んだ。

「知らねえよ。」

朝来たら机とかロッカーに入ってたんだよ。

食べ物だから捨てるわけにもいかないし、持って帰るしかない。

「いいなー、モテる奴は!ほら、また来たぜ?」

昂が指差す方向を見ると、バスケ部の後輩で、女子バスケ部の現在キャプテンの水橋恵那が立っていた。

俺達に気がついた水橋は走ってこちらにやってくる。

「こんにちはっ!あの、颯先輩、少しお話があります!昂先輩、いいですか?」

話って俺に?

「いいよいいよ!ほら、颯、実結ちゃんにはいっとくから!」

背中を押され、すたすたと歩く水橋についていく。

足が止まったのは、見慣れた体育館倉庫の前。

< 505 / 541 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop