君のとなりで
「あのですね、単刀直入に言いますと…」

そうは言うけどモゴモゴと話す水橋。

珍しいな、いつもハキハキ元気よく話すのに。

「どうした?」

「…好きですっ!あたし、ずっと颯先輩のことが好きです!」

っ…

びっくりした。

だってそんなこと、思ってもみなかったから。

「あ、いいんです!颯先輩にはかわいい彼女さんもいるの知ってますし、ただ伝えたかっただけなんで!」

水橋のことは、いい後輩で、バスケに関しては真剣で気が合う。

「これ、生まれて初めてチョコ作ったんです!良かったらもらってください。」

水橋が白い紙袋を手渡す。

「水橋、ありがとな。」

「いえ!こちらこそ、聞いてくださってありがとうございます!バレンタインで彼女さんとの約束もあるのに、すみませんでした!では!」

それだけ言うと、水橋はバタバタと走って行ってしまった。

待ち合わせ場所の下駄箱に戻ると、すでに昂と山下、そして実結がいて話していた。

「あ、モテ男が帰ってきた!今ちょうど話してたんだよ!」

昂がおどけた声で言う。

「実結、ちゃんと渡すのよ!じゃあね、颯君!」

山下は昂の腕を引っ張って行ってしまった。

「俺らも帰るか。」

「…」

あれ、なんかおかしい。

いつもなら絶対返事するのに。

歩き出したその後も、無言で下を向いている実結。

何かあったのか?

俺がなんかしたのか?
< 506 / 541 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop