君のとなりで

勘違い side颯

エレベーターの中で、抱きしめ合うようにしている、実結と知らない男。

それを見た瞬間、俺の体は意思より先に動いていた。

その男の腕の中から実結の手を取り、エレベーターの外に出る。

「そ、颯…?」

戸惑った顔で俺を見上げる。

なんだよ、まさか、昂の言ってたことが本当だったっていうのか?

ありえないだろ、絶対に。

でも、この状況。

エレベーターから降りて、俺の前に立ったその男を見る。

写真で見るより、小柄で多分、160cm前後くらい。

「あれ、もしかして誤解されてる?」

しばらくの沈黙の後、そいつが口を開いた。

すると、実結はなにか思いついたような顔をして言った。

「あのね、この人はあたしの従兄弟の、瞬君です!」

は?

従兄弟?

「はじめまして、実結の従兄弟で同い年の、春川瞬です。」

ニコニコしながらそう言った笑顔は、たしかに心なしか少しだけ実結に似てなくもないような。

「で、こちらが隣に住んでる、中原颯君です…」

「どうも、なんかすみません。」

俺、ちょっとだけだけど誤解しちまって、恥ずかしい!

実結がそんなことするはずないのにな。

あーあ、情けない。

少しでも疑った自分がムカつく。

「噂の実結の彼氏か!背高いですね、何センチですか?どうやって伸ばしたんですか?」

なんだか気さくでいい人そうだ。

「二人とも、寒いから中で話そうよ!あ、もしかして颯、どっか行くとこだったの?」

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