だから、無防備な君に恋に落ちた
選ばれた人



『……はぁ…』


絵美ちゃんを送り、自分の部屋に戻ってきたところで、俺は溜息をついた。



絵美ちゃんのあの問いかけは何を意味していたのか、なんて答えてほしくて聞いたのか、考えれば考えるほど、俺は蟻地獄にはまっていくようだった。




『……?』


不意にベッドの下に転がってるものが目に入った。

俺はそれに近寄り、そして拾い上げる。


それは、絵美ちゃんのものだと思われる手帳だった。


拾い上げた瞬間に、パサっと何かが床に落ちる音がした。




『……紙?』


拾い上げた紙、何かが書かれているようで、見てはいけないと思いながら、俺はそっと折り目のついた紙を開いていく。





そこには、絵美ちゃんの字で、たったの二文字が書かれていた。




『………………………すき………』




あの人を想って書いたもの…?



それとも、勘違い野郎の俺だから、少し期待してしまう。






殴り書きのように書かれた文字は誰に宛てたもので、誰を想ったものなのかは絵美ちゃんしか分からない。




でも、




“付き合ってもいいと思う?”


あの絵美ちゃんの質問が、俺の期待を膨らませていく。






もし。


もし、この二文字が俺に宛てられたものなら。




俺、絵美ちゃんに会いたい…









そう思った瞬間、俺は部屋を飛び出していた。







『え…航汰!!どこ行くの!?』


階段を下りたところで、母親がそう叫んだけど、俺は一目散に玄関の扉を開けて、飛び出していく。







絵美ちゃん。



ほんの少しでもいいから、


俺と同じくらいの“好き”じゃなくてもいいから、


だから、もし俺のことをほんの少しでも“好き”と想ってくれてるなら、俺に言ってよ。




絵美ちゃんの口から聞きたい。


絵美ちゃんの口から、“好き”を聞きたい。







そしたら、俺ももう一回、“好き”って言ってもいい?







絵美ちゃん…










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