兄貴がイケメンすぎる件


それから数時間が経って、ようやく放課後になった。

あたしが教室から出ようとすると、その時美桜に呼び止められる。



「世奈!」

「うん?」



なに?


そう思って振り向くと、美桜が心配そうに言った。



「大丈夫?」

「え、大丈夫って?」

「ほら…翔太くんのことだよ」

「…あぁ、」



そう言われて、あたしはやっと美桜の言っていることがわかった。


実は、翔太が学校を停学になってから、あたしは翔太のことを好きな女の子達に更に目をつけられてしまったのだ。


でも、こんなのもう慣れてるし。

別に直に何かをされてるわけじゃないし。

全然気にしてない。



「別に大丈夫だよ」



あたしが笑ってそう言うと、美桜はまだ心配そうな顔をしながらも、



「そっか、ならいいんだけど」



と相槌を打つ。


…でも、あたしは実はまだ美桜に言っていない。

あたしと翔太が付き合い始めたことを。


あたしは尚もそれを言わないまま、見送ってくれている美桜に「じゃあね」と手を振って教室を後にした。


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