心も体も、寒いなら抱いてやる
そんな彼女に、よりによって目撃されてしまうとは。

2分間の意識喪失を深く後悔する。

「大学生のバイトさんて、やっぱりやる気ないのね」と、真っ赤なグロスでてらついた唇を横に引く。

素朴な目鼻立ちの顔のなかでそこだけが攻撃的だ。

「すみません」

「ま、いいけど。ねえ、このコーヒー、カメラマンに持っていってくれる?」

必要以上になみなみと注いだコーヒーを差し出す。

カメラマンはルカが着替えを終えて出てくるまでに次のセッティングに夢中になっている。

今コーヒーを持って行っても飲む余裕はないんじゃないか、と思ったが、「ほら、ルカが出てくる前に早く持って行ってあげて」とせっつかれ、みのりはコーヒーをこぼさないよう注意しながら歩き出した。

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