心も体も、寒いなら抱いてやる
コーヒーがかかった手首の上が少し赤くなっている。

シャツには雨上りの水溜りのような茶色のシミが大きな模様となって広がっていた。

「あら、汚いシミになっちゃったわね。でも目が覚めたでしょ」

宮古が真っ赤な唇を歪めた。


少し前に衣装を着替え終えた俊は、そんな一部始終を控室のドアの前で見届けてからカメラマンに近づいた。

「あの、なんかゲロ吐きそうなくらい具合悪くなってきちゃって。すみません、テンション上げていくんで飛ばして撮影終えてもらえますか」

「よし、じゃ、行くよ」

スタジオにシャッター音が倍速で響き、「いいね」「いいね」いいね」「いいね」という声が途中からは興奮による怒声に変わり、撮影は予定時間よりもだいぶ早く終了した。
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