心も体も、寒いなら抱いてやる
第3章 接近
花蓮の家から歩いて10分ほどの場所にビィのかかりつけの動物病院はあった。

院内も先生の白衣も眩いほどに真っ白だ。

まだ他には患者さんがいなかったので、すぐに呼ばれて診察室に入った。

キャリーバッグからビィを出すと、まだ30代と思われる女性の獣医さんが「今日はお兄さんじゃなくてお姉さんに連れてきてもらったのね」とビィを見てほほ笑んだ。

「で、今日はどうしました?」

「朝から元気がなかったようで、弟が良かれと思って好物の牛乳をあげたら全部吐き出しちゃったそうなんです」

「なんか変わったものを食べたりしました?」

「いいえ、それはないと思います」
花蓮が答える。

先生はビィのおなかに聴診器を当てたりおしりに体温計を入れて熱を測ったり、一応血液検査も行ったが、特に異常は見つからなかった。

「うーん、多分今回も精神的なものだと思います」

「今回も?」

みのりは聞き返したが、横にいる花蓮は「やっぱりね」という顔をして先生を見ていた。

「ビートルちゃん、わりと頻繁に吐くみたいなんですが、検査上は何の異常もないし、いつもすぐに治るんです。保護された時の状況など詳しいお話を聞いていると、何か不安を感じたときなどに吐きもどしちゃうんじゃないかって気がします。一応お薬を出しておきますので、明日1日様子を見てもし改善していなければまた来てください」
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