心も体も、寒いなら抱いてやる
みのりは部屋を出た。

廊下を数メートル歩いてダイニングに入る。

まっすぐ冷蔵庫に向かったが、そこで急に見知らぬ男性が目の前を通り過ぎたので、驚いて「ひっ」と声にならない声を上げてしまった。

髪はぼさぼさで額にがっつりかかっているので顔はよく見えない。

けれど若くて、そしてむちゃくちゃ背が高い。

まだパジャマの上下を着たままで素足――――

ということは、強盗であるわけはなく、むしろ花蓮の家に泊まっていたずいぶん親しい人間だろう、とみのりは推測する。

花蓮の家は、お父さんが昨年から2年間の海外勤務でロンドンに行っていて、今年に入ってお母さんもお父さんの元に飛んで行った。

つまり1年間は両親不在。

だからもしや花蓮はカレを家に泊めていて、でもいつまでも彼が出来ない自分には遠慮してその存在を隠していたのかもしれないなどと、勝手に考えを巡らせていく。
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