琥珀の記憶 雨の痛み
「そう言や、ケイちゃん元気? 連絡取ってる?」

「あー……実は全然なんです、何してるんだか分からないや」


さっきちょっと話題に出たからか、ケイの話を振られて戸惑った。
同中だったことは知られてるし、今でも会ってると思われてるんだろう。


無断欠勤の後突然バイトを辞めたのは何か事情があったに違いないと、心配してはいた。
けど実際は、タイミングを逃したままずるずると時間だけが経って、連絡は全く取っていなかった。


なんか……私って、薄情かも。


「連絡してみよう。夏休みだし、時間があえば会えるかも」

「はは、そうよ。ちょっとは遊びなよ莉緒ちゃん。今休みのはずなのにいつも学校の制服着てるって、パートさんが心配してたよ」

「……出勤時の服って、意外と見られてるんですね……」


ユウくんに言われたことが過ぎった。
パートさんにまで、学校の制服以外に着るものがないと思われてたら最悪だ。


「私って、そんなに貧乏そうなイメージですか」

私の真剣な質問は有希さんに咳き込むほど笑われて、前のレジに入っているパートさんが顔をしかめて振り返ったほどだった。

慌てて小さく頭を下げ、キョロキョロと周りの目を窺う。
注目を浴びるほどではなかったことにホッとしながらも、注意深く声を潜めた。


「ま、真面目に聞いてるんですけど……」

「真面目だから笑えるんじゃない! 心配してんのは、進学校だからって勉強づめじゃ駄目ってこと。今の内から遊びも覚えていかないと、大学入ったら私みたいになるからね、莉緒ちゃん!」

「はあ……は?」


前半はとりあえず分かったが、後半のくだりが分からない。
有希さんみたいに?

とぼけた相槌を打ったまま考え込んで固まっていると、有希さんはどこかバツが悪そうに笑った。


「有希ねえさんはね、こう見えて高校生の頃は、莉緒ちゃんみたいな真面目ちゃんだったんだから。大学入った途端に箍が外れた結果が今よ」

「……嘘っ」

「ホント。みんな言うんだから、『有希がこんな風になるなんて思ってなかった』って」


正直、今の有希さんの『こんな風』がどの程度なのか、分からないけれど。
それでも、自由人オーラ全開の有希さんからは想像がつかない。

少し、いやかなり、意外な過去だ。
< 271 / 330 >

この作品をシェア

pagetop