琥珀の記憶 雨の痛み
――こんな、あっさりと。

人生初のアルバイトは、駅前ショッピングモール食品フロアのレジ打ちに、その日の内に決まってしまった。


ナツとメグはお惣菜コーナーで、コロッケの種を作ったり餃子を包んだりしているらしい。

「夕方お腹が減ったら遊びに来てね」

とはメグ。

もちろん社内ルール違反だけど、売り場に出せないような失敗品とか時間切れで回収される商品は廃棄にまわるので、結構自由らしい。


「食レジは食品フロアの花なのよ」

とはケイ。

男性とパート主婦が多いフロアで、レジには確かに若い女性が多いけど、花とは。

昔からお洒落で華やかだったケイらしい発想だ。


「親にはバイト終わる時間、1時間遅く伝えておくこと」

とはナツ。

その1時間は、他にも何人かいるらしい高校生バイトたちがたむろしてのおしゃべりタイム、なのだとか。

親に嘘吐くなんて、と思いながら。


期待で心が踊ったのもまた、事実。
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