琥珀の記憶 雨の痛み
「いいよぉん! ね、今日一緒に帰ろ。莉緒と話したいことあるんだぁ」

「え、いいけど。今日歩きだよ私。あんまのんびり出来ないし」

「もう雨上がったって、さっき買い物に来たパートさんが教えてくれたよ」


……微妙に会話が噛み合ってないような。
まあ、どちらにしてもすぐにバイトは終わりだ。


「それで終わり?」と返品が入ったカゴを指して聞いてくるナツに、

「今ケイがサッカー台周りの清掃してたから、これ終わったら合流するの。それで終わりかな」

と早口に答える。


「先に更衣室行ってるねぇ」

「了解、後でね!」

軽く手を振ってナツと別れ、またすぐに仕事に戻った。


クレームから戻ってきた岡本さんが手早く指示を回してくれたおかげか、閉店ぎりぎりまでバタついていた割には、思いの外早く――いつもとほとんど変わらない時間。


「よーし、ハケた! 皆お疲れ様ー、上がっていいよ!」


普段は下っ端バイトを店内に走らせてお客様が残っていないかどうかの最終確認をするのだけど、どうやらそれも岡本さん自身がやってくれたようで。

残っていた遅番パートさんも学生バイトも、一気に解放感に包まれたんだろう。
小さく歓声が上がった。
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