黒太子エドワード~一途な想い

子供達への説明

「どうやら、大変なことになってきたわね……」
 苦笑しながらジョアンがそう言うと、黒太子は微笑んだ。
「そうだな。だが、まずはトマス達だろう。今日はもう遅いから、明朝、伝えに行くか……」
「そうね……」
 そう言うと、ジョアンはため息をついた。
「ジョアン?」
 黒太子がそう言いながら彼女の肩を抱くと、ジョアンは慌てて作り笑いを浮かべた。
「大丈夫よ。ただ……トマスに『早過ぎる!』って怒られそうな気がしただけで……」
「早過ぎるものか! 私は、14年も待ったのだぞ!」
「あなたは、ね。私は、昨日、夫の葬式だったのよ……」
 そう言うと、ジョアンはため息をついた。
「疲れたんだろう? 今日はもう休め! 後のことは、明日、ゆっくり話そう。大丈夫だ。これからは、私がついている。一人にさせないし、何があっても、守る!」
 はっきりそう言い、ジョアンの肩を持つ手に力を入れる黒太子に、ジョアンは微笑んだ。そして、その手を握った。
「そうね……。頼りにしているわ、エドワード」

「──いくら何でも、早過ぎやしませんか?」
 結局、細かい色んなことを片付けると、黒太子とジョアンが子供達に再婚の話を切り出したのは、それから二日程経った後であった。
 それでも、長男で、今年10歳になる、第3代ケント伯トマスは、不機嫌であった。
 その2歳年下のジョンは、兄と母、そして黒太子の顔を順に見て、黙っていた。
 下の娘のジョーンとモードに至っては、まだ5歳と3歳という幼さの為、フィリッパがつけた乳母に抱き付いたり、しがみついていた。
「だから、今すぐどうこうするつもりは無い。早くても、年明けにしようと思っている」
「それでも、僕にとっては、早いんです!」
 悲鳴に近い叫び声をあげると、トマスは母を見た。
「大体、母上、あの葬式での号泣は何だったのです! すぐ他の男に乗り換えることへの罪悪感だったのですか?」
「それは、違うわ! もうあの人は、どこを探してもいないんだという寂しさから出たものよ! あなた達だって、お父様の遺体を見て、言ってたじゃない! 人形みたいだ、って。お父様には見えない、って……」
「だからといって、まさかその葬式の晩に、他の男との再婚を決めるとは思いませんでしたよ!」
「それは……」
「それは、私が悪いのだ!」
 そう言ったのは、黒太子だった。
「私がジョアンの前でひざまずき、承諾してくれるまで動かないと言ったから、ジョアンは……」
「やめて、エドワード! あの時のあなたの言葉に心が動いたのも事実だもの。あなただけが悪い訳じゃないわ! だから、そんな風に自分を責めたり……」
「もう、やめて下さいっ!」
 それは、長男トマスの悲痛な叫びであった。
 叫んだ、まだ10歳の少年の目には、涙がいっぱい溜まってきていた。
「父上を亡くしたばかりだろいうのに、二人で仲のいいところを見せつけないで下さい!」
「トマス……」
 息子のそんな姿を見たのが初めてだったのか、ジョアンは目を丸くしながら長男を見た。
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