黒太子エドワード~一途な想い

カレー代表とイングランド王

 ──結局、あとの三人は、そのリヨン爺さんの言った通りの者達が選ばれ、翌朝早く、城門の外に出たのだった。
鍵を持って、無帽、裸足で、首にロープを巻き付けて。
「ほう……。本当に申した通りの格好で出てきよったか」
 その姿を見て、エドワード三世が微笑むと、黒太子は心配そうに父の顔を見た。
「父上、これでもう市民の処刑はなさいませんよね?」
「ああ。あとは、奴らの始末だけだからな」
「父上!」
 青ざめた顔でそう叫ぶ黒太子に、エドワード三世は首を横に振った。
「お前は、まだ分かっておらんようだな? これは、戦争なのだ。慈善事業などではないのだぞ!」
「分かっております! 分かっておりますが、あのように覚悟を決め、こちらの申し出通りの格好で来た者を処刑なさるというのは、騎士道にあるまじき行為だと思います! こちらの要求をのみ、逃げも隠れもせずに現われた者に対しては、正々堂々と対処すべきではありませんか?」
 黒太子が必死の形相でそう言うと、エドワード三世は苦笑した。
「あの様な者を処刑するのは、騎士道並びに、王道にも反する、と言いたいのだな? まったく、うるさい奴だ!」
 そう言いながらも、何故かエドワード三世の顔は嬉しそうだった。
「まぁ、話だけは聴いてやるが、他の市民は殺さずに追い出せ! よいな?」
 エドワード三世がそう言って侍従のエスターを見ると、彼は黙って頷き、その場を後にした。
 それを傍で見ていた黒太子は、ほっとすると、影のように寄り添っていたジョン・チャンドスを見た。
 白髪の老騎士は、その視線で全てを悟ったのか、小さく頷くと、その場を後にしたのだった。
< 41 / 132 >

この作品をシェア

pagetop