LOZELO
次お父さんが来るまでに心をまとめておきたくて、私は莉乃が持ってきてくれたルーズリーフを一枚、ベッドに備え付けのテーブルに置いた。
莉乃はこないだも、綺麗にまとめられた全教科のノートの写しを持ってきてくれたっけ。
幸せなことばかりだったらいいのに。そう思う。
わりとすぐにお父さんから返信が来て、今週末出張でこっちにくる用があるらしいから、行こうと思っていたとのこと。
お父さん一人でくるなら、少しは気が楽だ。
そのあと石山さんがやってきて、治療が行われた。
初体験の"おくすり"は、優奈ちゃんのおかげもあってか順調に投与が終わり、副作用も出なかった。
安静にしているよう言われていたから、ずっと横になっていたら、あっという間に終わっていた。
次の投与は2週間後で、それまではとりあえず経過を見るとのこと。
「どのくらいで退院できますか?」
午後の回診に来た神崎先生に冗談っぽく聞くと、軽い感じで"1か月くらいかな"と言われたから、あからさまに不快感を顔に出した。
「マジですか」
「んー、黒川さんがいい子にしてれば、もう少し早くなるかもしれないけど」
「じゃーいい子にしてまーす」
こんな会話が、病院での日常になりつつあり。
親子みたい、と看護婦さんは言う。
ある程度良くなったら食事を再開して、問題なければ退院。
確かにまだ、朝起きたときの腹痛や腹部の違和感は強い。
程遠い気がしてため息が出そうになったけれど、しっかり治さないとまた再燃しかねないから。
少し、楽しみだったりするのだ。
退院してからの莉乃や夏美との付き合いとか。
そんな気持ちになるなんて、入院前は思ってもみなかった。