LOZELO
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「ねぇ、端っこの部屋の子だよね?」
トイレに行った帰り、声をかけられて振り向くと、私と同じ点滴の袋をスタンドにぶら下げた女の子がいた。
グレーのスウェットといい、髪の長さといい、雰囲気が似ている。
「よかったぁ。同じ病気の子がいるよって教えてもらってて、話したいなって思ってたんだけど、なかなか会えなくてさー」
彼女の名は、杏子ちゃんというらしい。
「よかったら、いろいろ話さない?」
「私の部屋、今私一人だから来る?」
「うん!ちょっと部屋帰ってから行くね!」
話しかけてもらったのはうれしいけど、ちゃんと話できるかな。
部屋に戻りながら、内心不安でいっぱいだった。
間もなくしてやってきた杏子ちゃんは、ケータイと点滴のスタンドを両手にやってきた。
「端っこの部屋、いいよねー。私の部屋って詰め所に一番近いから、いつもにぎやかでさ」
「入院した時からここだったから、ぜんぜん気づかなかった。そうだよね、看護婦さんたちいつも動き回ってるし」
「もう慣れたっちゃあ慣れたけど、やっぱり静かな部屋に来るとこっちがいいなあって思っちゃうなぁ」
杏子ちゃんは、"はい、あげる"といって私の手のひらに飴玉をくれた。
「ありがとう」
「絶食中だと、お茶と水と飴しかダメじゃん?飴には詳しくなっちゃってさ。それ、私の一番のオススメ」
にこっと笑った顔がかわいくて、すごく親しみやすい子だなぁと思った。
杏子ちゃんも私と同じ病気で、聞けば私と同じ時期に入院していたらしい。
誰も私に教えてくれなかったけど、杏子ちゃんと私は"双子みたい"と言われていたんだって。