LOZELO



「どう?明日、話せそう?」

「なんとか。頭の中整理したから、多分話せると思うんですけど」

「おぉ。少しはすっきりした?」

「だいぶ自分と向き合えたって気がします。すごく辛かったけど」

「これから幸せになるための辛さだったはずだし、もう味わうことはないと思うから」


偉いよ。と微笑んで私を見る江口先生がいたから、私は変われた。

自分を愛してあげる。そのきっかけを、大切さを、教えてくれたから。

もしも病気にならなかったら、私は今、何をしていただろう。

大事なことに気づかないまま、きっと私は――


「聞きたいことがあるんだけどさ」


今はもう、聞かれて困ることなんてない。

そんな私が、確かに存在してるんだ。


「退院後のこと、今はどう思ってる?」


入院したての頃は、もう、どうにでもなればいいと思っていた。

別にこのまま、再起不能な体になってもいいとさえ思っていた。


「元気になったら、どうしたいと思ってる?」

「…病気だってわかった頃は、自分のこと完全にあきらめてました。でも今は…」


私のことだけ考えてみたら、私にだってちゃんと意思があった。

それに気づかずに過ごしていたから、全てが新鮮で。

したいことが、たくさんある。
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