LOZELO
じゃあ来週な、とカーテンを出て行ったお父さんを見送って、さていい気分に浸ろうとしたら、お父さんが何かに驚く声がして、思わずベッドから降りた。
「どーしたのお父さん!」
カーテンから顔を出すと、ちゃっかり傍聴者が多数そろっている。
莉乃に杏子ちゃんに、石山さんも、ほかの看護婦さん。
そして、江口先生まで。
「ごめん紗菜。みんな紗菜のこと心配でさ」
莉乃が目頭を押さえながら言う。
みんな、目が潤んでいるから可笑しくて笑いを堪えられない。
「何がおかしいのよー!紗菜のこと心配な人ナンバーワンの江口先生が、何度カーテンめくって飛び込んでいこうとしたと思う?ばれないように止めるの大変だったんだから」
杏子ちゃんも、涙を拭いながら言う。
「もう、本当に涙なくして聞いてられなかったよ」
「ちょっと待って、みんなずーっといたの?」
メンバーは多少減ったり増えたりしたらしいが、誰もいない時間はなかったらしい。
ということは私の過去も、夢も、家族への思いも全てダダ漏れだったということ。
「めっちゃ恥ずかしいわー」
「紗菜、素敵だったよー?」
「莉乃っ!冷やかさないでっ!」
そんなやりとりを見て、楽しそうで安心したよ、と頭を撫でるお父さんが、みんなに頭を下げる。
「こんな父親で、本当にこの子には苦労かけました。娘の気持ちもわからずに、本当に今まで何をやっていたのかと反省しました。江口先生、この間私にガツンと言ってくれて、ありがとうございました」
江口先生、何をいったんだろう?
あとで事情聴取だ。
「元気になるまで娘をよろしくお願いします。莉乃ちゃんは、退院したら学校でも紗菜のことよろしくね」
みんな、笑顔。
こんなに暖かい空間が、私の周りに存在している。
その事実を、しっかりと心で受け止めて、抱きしめた。