LOZELO



「僕に感謝するよりも、紗菜さんとの時間を今は楽しんでください。僕はそれを何よりも望んでいますから。治療の面はこれからもしっかりサポートしていくので、お任せください」


出会った頃は、未来なんて見えなくて。

今でさえが真っ暗で。人生の必要性も、見出せなかった。

光を見出してくれたのは病気であり、病院で出会った人たちであり、友達であり、家族であり。

世界ががらりと色を変え、与えられる愛にも、未来が見えてくる感覚にもまだ慣れないし戸惑っているけれど。

実は心地よかったりもする、今日この頃。


「おねぇちゃんが退院したら、一緒にお風呂入るんだよ!それでね、一緒に寝るの!」


神崎先生に懐いた澪は、おしゃべりをやめない。

おねえちゃん好きアピールみたいで照れるけど、かわいいから許すよ。


「紗菜ちゃん、退院したら忙しくなるぞー?」

「澪なら大歓迎だよー」


ぎゅーっと抱きしめた時の澪のかわいい笑い声につられて、みんなが笑う。

幸せだなと、純粋に思った。

この空間にいられることを、こんなに嬉しく思ったのは初めてかもしれない。

こんな日が来るなんて思ってなかったから。



"家族"の時間を満喫して、笑って、みんなを見送った時にはもう日が暮れかかっていたけれど、笑顔のお父さんとママは優しい目をしてた。

だけど、私を一人にするのがかわいそうだと、澪は涙目。

澪と二人で撮った写真を見せて、澪の顔見たらおねえちゃん頑張れるから、帰るまで待っててと抱きしめたら、歯を食いしばって涙を我慢していた。

もらい泣きしそうになるのを堪えるのが大変だった。

病棟のエレベーターの扉がしまって、部屋に戻ろうとした時に声をかけてくれた石山さんが寂しいでしょ、と心配してくれて。

早く元気になりたいって気持ちが今まで以上に沸いてきましたと伝えたら、もう少し頑張ろうねと応援してくれた。

私の体。頑張れ。
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