LOZELO



***


二人が昼過ぎくらいに帰って、私はご飯を食べた。

気のせいか、ちょっとご飯の粒が大きくなってる?

舌に触る感触が、ご飯の形な気がする。

あとでママに報告しよっと。

喜んでくれるかな。

午後はお風呂の予定も入ってる。

石山さん来たら、点滴止めてもらおう。

そう思って、お風呂の道具を準備しようと思っていたら、黒川さーんと聞き慣れた声。


「先生、帰ったの?」

「さっき、お昼前ぐらいに帰りましたよ。どっさり宿題置いて」


私が指差す先には、さっきの紙袋。


「暇なくなっちゃうな」

「ま、ありがたいですけどね」


苦笑いしながら、ついさっきまで莉乃が座ってたパイプ椅子に、江口先生は腰をおろした。


「身構えてたみたいだったから、意外と普通で安心したよ」


私のことを言っているんだってすぐわかったけど、全部見抜かれてるなんて、恥ずかしすぎる。


「緊張しますよ。今まで反抗してきた人に心開くなんて」


強がってはみたけど、多分無駄なことなんだろう。


「別に今更何言われてもいいって覚悟はしてても、ちょっと怖くて」

「大丈夫だった?」

「進路の話とか、体調の話とか、普通にしたくらいで」

「そうか。安心した?」


頷いた私に江口先生は微笑んでくれた。


「何も気にせず、学校に戻れそうです」


でも、そう言葉にしてみて初めて、感じる違和感。

私の本意ではない気がする。

でも、頭の中では再出発の準備は整ってるはずなんだ。


「食事再開してからの経過もだいぶいいから、早くて来週末には退院できるよ」

「ほんとですか!うれしい」


早く家に帰りたいのも事実。

学校に行くのも、莉乃に会うのも、勉強するのも、楽しみなはずなのに。


「あとは、黒川さんの心の準備だけかな」
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