LOZELO



おぼつかない足取りで部屋に駆け込む。

視界に入ってくる景色は網膜に映っては流れ去り、呼吸も乱れて、気がつけば右手はカミソリを握っていた。

左手首のリストバンドは、消せない傷を隠すため。

それをはずすと、ミミズが刻まれたみたいな無数の線が現れる。

そしてまた、新しい赤。

滲み出るそれを見つめていると、なんとも言えない気持ちになる。

生きていることを実感するような。

はっと我に返るまではこれっぽっちも痛みなんて感じない。

だけれど、床に落ちた血液とぴりぴりとした痛みを冷静に五感で捉えて初めて、自分がしたことに気づくのだ。

ティッシュで傷口を押さえながら、フローリングの上に落ちた自分の血を拭く惨めさには相当笑える。

もうしない、と何度も理性に誓ってきたはずなのに、再犯。

だから私はダメなんだ。
自分も守れないくせに、大事な人をも守れない。


「…ごめんね、お母さん…」


涙の数だけ私は弱くなって、自分に甘くなり、逃げ道を探すのが上手くなっていくだけなのだ。
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