LOZELO
一学期の前半の体育は、スポーツテストに時間を費やして終わる。
明日は何をやるんだろう。
確か、あとはシャトルランだけ残っていた気がする。
自分の限界に挑む、時間無制限の戦い。
また、お腹が痛くなったらどうしよう。
あいつにそれを見られるのが、知られるのが至極嫌だ。下血よりも腕の傷を見られるよりも。
また私を侮辱して、気持ち悪く笑うんだろう。
それを思うと体育の時間だけは何よりも憂鬱だった。
お腹も、心と連動するように違和感を訴えてくる。
気のせいだと思い込もうとするのは、人間としての反射的な、無意識の防衛機能だろうか。
小さい頃から病気一つしてこなかった私が、何かしらの疾患を抱えているなんて、ありえなさ過ぎて実感がわかない。
トイレに行くと毎回鮮やかな赤が、透明なはずの水を確かに染めているわけだけれど。
それを見て、少しだけ安心している自分がいるのを否めない。
誰かが私を心配してくれるとか、学校を休めるかもしれないとか、そんな理由じゃなくて――
「紗菜ちゃん、お風呂入ってもいいわよー」
まだ閉じきらない手首の傷口、きっと今日も沁みるだろうな。
慣れた痛みと出会うために、私は風呂へと向かった。