LOZELO
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「紗菜、すごい」
シャトルランは、長距離の練習をしたからか、女子では最後まで残った。
当然、先にやった男子のほうが体力もある。
でもその記録に食らいついて体力を搾り出した結果、限界を超えた気がした。
倒れこんだのは腹痛のせいじゃなくて、立っていられないほど体力を消耗したから。
息切れのレベルを超えた呼吸が、私の円滑な発言を妨げている。
「あり、がと…莉乃…」
次の授業は、数学。
今日もまた、昨日と同じ練習問題の解説だろうか。
そんなものを聞くくらいなら、サボりたいな。
どうせ授業もサボれない、ブレブレのヤンキーなんだけど。
「よーし、みんな終わったから集まってくれー」
少しは休ませてよ。
きっと、私が疲れて倒れこんでるのを見ていながらの集合命令。
「黒川ー早くしろー。お前のせいで授業終わるの遅くなんだけどー」
イラッとする。
傍らの莉乃も、私と浅野の狭間で揺れている表情。
「莉乃、行ってていいよ」
「だって紗菜、歩ける?」
回復した僅かな体力で立ち上がる。
99パーセント、気合いだった。
「疲れてるだけだから、大丈夫」
列に並んで、何かしゃべってる浅野の声は聞き流して、疲れ果てた体で息の乱れを全力で押し殺した。
授業が終わる挨拶を係の生徒が言い終わるのとほぼ同時に更衣室に歩き出して、そのことにも嫌味を言おうとするウザい教師をガン無視。
次も授業があるんで、あんたみたいなお邪魔虫には付き合ってられません。
と心の中で呟いて、着替えをする。
今日はもう、体育さえ終われば何も考えなくていい。
だから、もう何も考えたくなかった。
それが逃げだと言われても、こうするしか私は今、生きられない。