LOZELO
「どーしたの紗菜!」
「…莉乃、部活は?」
いつもなら、軽く話をしたらすぐ部活に行くのに。
驚いた私を、椅子から立ち上がった莉乃は悲しい目で見つめた。
「部活なんて行けないよ!どうしたの?」
条件反射的に心配をかけたくないと思ってしまうのは、生き方のクセみたいなものなんだろうけど、真剣な眼差しを目の前にして、隠し通せないなと思った。
「…お腹、痛くて」
「こないだもすごい痛がってたよね?病院行ったの?」
「行ってない、けど…」
「行ってきた方がいいよ」
「…ありがとう。行ってみる」
「絶対行かないくせに。紗菜のその顔は、テキトーに話受け流してるときの顔」
一年という月日の長さを感じる。
こんなにも私の感情を見抜けるのは、莉乃しかいない。
「今週末、病院行く!」
言ったのは、莉乃だ。
「私が責任もって連れてく!部活は休む!」
「そこまで…いいって」
「もう私の心は変わらないから!」
こうなった莉乃は本当に自分の心を曲げないのを私はよく知ってる。
「…わかったよ。お願いします」
「うん!紗菜が倒れちゃったら、学校つまんなくなっちゃうもん!」
私の青春は紗菜だもん、なんて堂々といえる友を持てて、幸せだ。
少しだけ、痛みと体のだるさが和らいだ気がした。
夕暮れの教室が、今日ほど心地いい日は初めてだ。
部活に向かう莉乃とは、体育館への分かれ道で別れた。
1年前は別れることもなかった。
体育館から出入りする方が近いからと、私と莉乃だけそうしてた。
遠い昔のことのように思える過去。
でも、今はそうじゃない。