LOZELO



「明日はね、パパとママが来るの!」


週に1回、これるかこれないかの両親の訪問を、優奈ちゃんはすごく楽しみにしていた。

それを励みに、検査を頑張ろうとしている。

"ご飯を食べないことが何よりの治療"の言葉通り、私の腹痛は少しだけ減退した。少しだけ。

強い痛みに襲われる回数に、さほど変わりはない。

入院前から感じていた体のだるさは、気のせいじゃなくてちゃんとした病気の症状であり、優奈ちゃんに謝ってベッドに横になることもたまにあった。

今日も然り。合格をもらった優奈ちゃんが検査を受けに行ったのを見届けて、静かに横になった。

じわりと広がって漠然としていた倦怠感の波が、実感となって体を重くする。

きつく目を閉じたのは、頭痛のような頭の重さのせいだ。


「紗菜ちゃん、具合悪いの?」


カーテンを少し開けて私に声をかけたのは石山さんだった。

極力人にはこんな姿を見られたくないと思っているけれど、体調の悪さには勝てない。


「…ちょっと、頭が痛くて」

「お腹は?痛む?」

「たまに、ちょっと」

「もうすぐ江口先生がくるから、伝えておくね」


そんなことしなくていい、と頭では思っているのに、声にすることができなかった。

具合の悪さで眠ることもできず、耐えることしかできない私の元に江口先生が来たのは、優奈ちゃんが検査から帰ってくる少し前だった。
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