LOZELO
「どうして言ってくれなかったの」
口が動かなくなる。
気持ちが言葉として明確にならないのは、莉乃に気を遣っているから。
いい人でいたいから。
言葉を、気持ちを、気の使い方を選んでしまうから。
「もう、この際だからはっきり言って?」
莉乃の口調が、弱々しくなっていく。
「紗菜、私のこと本当は嫌いなの?友達だって思ってないの?」
涙声になった語尾に、私の胸も収縮したような感じになる。
友達になろう、なんて契約をするシステムは、この世の中に存在しない。
波長が合う人同士が自然に築きあげていくもの。
でも、そんな目に見えない、時として武器にもなりうる人間関係を信じられるほど、私の心に余裕はない。
はずだったのに。
「ねぇ、紗菜」
莉乃は、はっきりと私を、友達だと思っているらしかった。
目に見えない絆を信じていた。
だからこそ、私の気持ちを確かめようとしている。
それなのに、私は――
「私、莉乃は、頑張って私に合わせてくれてるんだと思ってた」
談話室に来てから初めて私が発した言葉は、少し掠れている。
「学校でも浮いてるし、先生たちの風当たりも強いし。でも莉乃は今更友達やめれなくて、ずるずる付き合ってくれてるんだと思ってたの」
そんなことないよ、と莉乃は泣きそうな顔で否定したけれど、見ていられなくて目をそらした。