LOZELO
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さっきまで莉乃が座っていたパイプ椅子に腰掛けた江口先生を見て、あ、今日はきっと簡単にここを離れない気だなと悟った。
莉乃のメールに、"寂しくて大泣きしてる"とふざけた絵文字つきで返信をした直後のこと。
「…何を話せばいいんですか」
「黒川さんが治療を拒んだり、退院して元気になることを嫌がる理由、全て」
「日が暮れますよ」
「それでも構わない。すべて話してほしい」
「どうして聞きたがるんですか?体の不調を落ち着かせることが、先生の仕事でしょ?」
完治はしないけれど、緩解状態を維持することがこの病気の最終目標。
そのために、先生は治療に携わっているはずだ。
「もちろんそうだよ。黒川さんに日常に戻ってもらうことが僕の仕事」
「だったら、私が抱えてるものなんて知る必要あるんですか?」
「あるよ」
話してほしい。
ためらいもなく、言う。