LOZELO
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「紗菜ちゃん、元気になった?」
夜に一度目が覚めたけど、少し莉乃とメールをしてすぐにまた眠ってしまった。
深い眠りに落ちていた私が目を覚ますと、私と優奈ちゃんのベッドを仕切っているカーテンの隙間から、かわいい声が聞こえた。
窓の外には青い空が広がっていた。もう、朝らしい。
「おはよう、優奈ちゃん」
「看護婦さんも、紗菜ちゃん疲れてるから寝かせておいてあげてね、って」
朝の検温も、されていない。
気を遣わせてしまった。
「優奈ちゃん、昨日パパとママ来たんだって?」
「うん!お外でご飯食べてきたよ!」
「退院するって決まって、喜んでたでしょ?」
「うん!幼稚園のお友達も優奈のこと待ってるよ!って」
嬉しそうな笑顔が、私まで笑顔にさせてくれる。
「あとね、ママが紗菜ちゃんに会いたいって言ってたよ!」
「優奈ちゃんのママが、私に?」
「うん、優奈といっぱい遊んでくれるおねえちゃんだよ!って教えてあげたら、ママも会いたい!って」
誰かに想われている、って感じることがこんなにもむずがゆく感じるなんて、知らなかった。
今日も点滅している莉乃からのメールも。
たまには、私からおはようって言ってみたいな。
そう思いながら、かわいい妹みたいなオトモダチだよ、という文面と一緒に送る写真を撮るために優奈ちゃんを誘う。
大喜びしてポーズの練習をしているから、私も一緒になって練習に付き合った。
自分がしたいことを一生懸命する。
その答えは、優奈ちゃんには見えるらしい。
みんな、わかるのかな。
自分の気持ちが。自分の本望が。
私には見えないんだ。
未来も、自分の気持ちも。