あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
徐々に態度も口調も弱くなる親父に、再度笑みが零れた。今までの俺はどうしてこんなクズでカスみたいな人間にいいように虐げられてきたのだろうか。真面目に考えるとアホらしくなる。不毛だ。


「色々と調べたって言っただろ?今日の千社守祭のこともな。……なあ、選べよ。自分達を守るか、他の守るべき者を守るか」


言葉を口にしながら、カッターを握る手にもう一押し力を込める。


「俺達が十五になった時の千社守祭で、美菜を神人にしろ。出来るよな、村長の、アンタなら、難なく、自然に、……なあ?」
「!!」


動揺の色を隠せなかったのは、意外にも美菜の母親の方だった。

小刻みに震える身体の振動が、肌を密着させていた俺にも伝わってくる。そうして、確信した。自分が描いた未来の成功を。


「さあ、どうする?」
「……それ…は、」


選択肢は二つ。

俺は、親父の答えに目を細めて喉を大きく上下に揺らした。

耐えて、耐えて、耐え忍んで、夏まで待って、遂にきたんだ。復讐を果たす時が。これこそが俺の望んだ完成図。


「ハハ、やっぱり最低のクソ野郎だな、アンタは」
 
< 114 / 173 >

この作品をシェア

pagetop