あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


馬鹿だ、俺。本当に馬鹿過ぎて泣けてくる。

早紀の気持ち、全然気付いてなかった。それどころか美菜だけじゃなく、早紀まで追い詰めて、一人で背負込ませて。――あの時。


『ゔああああぁぁあ゙あァァ!』


叫び声を上げて逃げていった早紀はなにを思っていたのだろうか。

親友が殺されて、俺達が帰って来て、きっと、次は自分だと。怖かったよな。苦しかったよな。そうだよ。早紀だって普通の、か弱い女の子なんだ。怖くて、怖くて、ただ、怯えてたんだ。

なのに、俺は、

早紀に美菜の面影を見つけて笑ってた。また美菜が戻って来てくれたんじゃないかなって、そんな風に思って心のどこかで(よろこ)んでた。


「っ、ごめ……ごめん、早紀…」


強く握り締めた手紙が、くしゃりと哀しい音を立てる。その、潰れた手紙から仄かに漂う甘い香りは、いつの日かの早紀の笑顔を一緒に運んできた。けれど、彼女の笑顔はもう二度と見れない。
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