あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
≪15≫ コンプリケイション


「遂に俺とお前だけになったな」


深く、暗い、森の奥。母さんには家から一歩も出るなときつく言われていたけれど。俺の足は自然とここへ向かっていた。

美菜の眠る場所、禁忌の森へ。

聖と見たあの花は、既に朽ちている。人の都合で刻まれた美しいだけの花の寿命なんて、こんなものか。こんなものなのだろうな。


「……早紀」


地面から突き出ている切り株に座り、ポケットにしまっていた手紙を未練がましく取り出した。何度読んだところで、何度後悔したところで、早紀は生き返らない。そんなこと、わかってる。でも。


「早紀、ごめん」


謝らずにはいられなかった。美菜の眠る、この場所でだからこそ。

なんて、これも自分のエゴだ。美菜が聖を想っていたように、早紀は俺のことを。幸次だって、美菜のことを好きだったと言っていた。なにも、知らなかった。知ろうともしなかった。

みんなが、それぞれに抱えていたものを。
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