あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
聖も、綾も、俺が、俺達が知り得なかった想いを、なにかを、抱えていたのかもしれない。もう尋ねることすら出来ないけれど。

全部失った。
そして気付いた。
やっと気付いた。

俺に足りなかったのは、ほんの一歩の勇気。

ほんの一歩の、踏み込む勇気。もっと、皆と話をしたかった。親友だからと言って、心の内を全て曝け出せるわけじゃない。

それでも〝なにか〟を変える力はあったのではないだろうか。

もしかしたら親父とだって解り合えたのかもしれない。最初から諦めて、歩み寄る努力をしなかった。全部、全部、中途半端だった。


「………美菜」


ごめん、ごめん、美菜。

お前の気持ち、今ならわかるよ。俺だって愛されたかった。愛に飢えてた。俺だけに向けられる、無償の愛が欲しかった。美菜が俺の親父に望んだもの。聖に望んだもの。今更だけどわかったよ。

俺じゃ駄目だったってことも。
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